「酒の育ちの上で一番大切なのは何と言っても熟成であるといっても過言ではありません。日本酒は同じ醸造酒であるワインに比べ、「熟成」に重きが置かれにくい酒です。日本酒には特有の天敵である「火落ち菌」が発生しやすく、酸性の強いワインより変質のスピードがはるかに速いのです。しかし、この大切な熟成を現在の日本酒は、比較的軽く見られています。一定期間の貯蔵熟成が絶対に必要な事は、新酒の荒い風味と強いアルコール香が嫌われることでも分かると思います。適度に熟成した良い酒は、味に「まるみ」があり、全体が「調和」し、アルコール香がなく、「舌ざわりが滑らか」で喉越しが良く、味の切れが良いなど造り手でなければわからないような特徴を持つものです。
 このようにあかぬけした酒は、しぼりたての新酒に火入れをした後、貯蔵タンクで六ヵ月から一年間ほど貯蔵して造られます。しぼりたての新酒は、アルコールの分子がまだ馴染んでおらず、刺激的で荒々しい味わいや「麹ばな」(こうじばな)と呼ばれる新酒香を持っています。貯蔵中の熟成により、酒中の数百を越す微量成分が温度や酸素に影響されながら酸化・分解・縮合などの化学的反応や物理的反応を起こすことにより、華やかだった新酒の香味が消え、水の分子がアルコール分子を包みこんだ状態となり、まるみのある調和のとれた飲みごろの味わいになります。(つづく)

 
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