食中酒としての日本酒

まっとうな日本酒の復権を!

 あなたは、日本酒派ですか。それとも焼酎派?ワイン派?ビール党ですか。 昭和四〇年代頃までは、お酒と言えば日本酒でした。 戦争が終わり、経済的にも豊かになるに従って、食生活も豊かになり脂肪分・たんぱく質の豊富な食事になりました。それに伴い日本人が飲むお酒も、多様化してきました。 お酒の時に食べるものが単なる肴から料理に変わったのです。そして、料理を美味しく食べながらお酒を飲む、料理を美味しくしてくれるお酒を選ぶ、いわゆる「食中酒」と言うジャンルが誕生しました。ワインでは魚料理に白ワイン、肉料理には赤ワインと言うように食中酒の位置づけが明確です。 日本酒でも肉料理に合う日本酒、魚料理に合う日本酒と言うように料理に合わせて日本酒の種類を選ぶことが行われる様になってきました。日本酒も吟醸酒だ、純米酒だと言う前に本来の日本酒の概念に無いモノが求められているのではないでしょうか。 それは「熟成」と言う概念です。 日本酒は古来から「一年酒」として位置づけられ、熟成酒としてはいわゆる古酒しかありませんでした。最も熟成に適していると言われる純米酒の生酒は変質の恐れがあるために低温熟成が絶対条件で、そのためには五年、十年と長期間の熟成期間が必要でした。 これを解決したのが、アルコール度数を高めて高温熟成(短期間熟成)を可能にした醲献でした。この醲献はアルコール度が高いゆえに共すると飲んでみる前に逡巡してしまう傾向がありました。 そこで今回新たに開発したお酒が『和乃醇』です。かなり昧の濃い純米酒を完全熟成しましたが、古酒臭さは全く無くフレッシュな熟成酒です。 熟成とは、本来の酒の旨味・コクを損なう事なく味が丸みを帯び、刺激が少なくアルコールを感じさせない事だと定義しています。従って料理を食べながら飲んでも料理の味を邪魔する事なく、料理の旨味をさらに引き出すのが特徴です。 そして懐石料理などの料理の変わり目では、前の料理の味を切ってくれるお酒です。 更に酔い方が穏やかで、ほろ酔いが持続するお酒です。もちろん翌日に残るなんて事もありませんが、適量をいただく事が肝要です。 言うまでもなくお酒は晴好品ですが、『和乃酔』は、「日本酒はどうも・・・」と言う方に是非一度お試し頂いて欲しいお楢です。

食中酒としての日本酒【和乃醇】【特撰和乃醇】

 食中酒は、食事と一緒に楽しむお酒ですから、料理の味を生かしてくれるお酒が向いています。程よい個性で肝心の料理の味が消されることなく、料理との相乗効果が見込めるお酒が理想です。
 
目次

  1. 純米酒が食中酒におすすめの理由
  2. 食事の旨みを増幅させる効果
  3. 食中酒としておすすめ【和乃醇】のこだわり

 

1.純米酒が食中酒におすすめの理由

 純米酒は米、米麹、水だけで造られた日本酒で、他には何も入っていません。そのため、ご飯(白飯)に合う料理全般にマッチします。和食はもちろん、中華料理や洋食、肉料理、魚料理とさまざまな料理に合わせて楽しむことができます。
 『新時代の』日本酒は、インパクトのある香り、主張の強い味を持った日本酒が主流ですが、その真逆をいくお酒がないというか売れなかったのです。具体的に言うと、食事を引き立たせる控えめな香りとすっきりした後味を持ったお酒が少なくなってしまったというのが現状です。

2.食事の旨みを増幅させる効果

 お造りを食べるときに醤油をつけて食べますが、どうして美味しくなるのでしょう。

 醤油にはうま味成分が多く含まれています。よく耳にするのが、昆布に含まれる「グルタミン酸」とカツオ節や煮干しに含まれるうま味成分の「イノシン酸」です。「グルタミン酸」は、タンパク質の構成成分である「アミノ酸」のひとつで、天然食品の「アミノ酸」の大部分を占めています。「イノシン酸」は細胞の核の中にある遺伝子の構成成分である「核酸」のひとつです。ほかにも三十数種類の物質が確認されています。
 お造りを食べる時、醤油をつけて食べると(素材の旨み)+(醤油の旨み)が重なり︑相乗効果でうま味が6~7倍にも感じ、《美味しさ》が際立ちます。実は日本酒にも、たくさんの米由来のアミノ酸が含まれています。さらに日本酒を飲みながらお造りを食べると【素材の旨み】+【醤油に含まれるうま味成分】+【日本酒に含まれる旨み成分】が三重にも重なり合い、さらに美味しさが増幅され《美味しさ》が際立ちます。
 残念ながら焼酎には、微量しかうまみ成分であるアミノ酸類が含まれていないため、味わいのうま味を増幅させる作用はほとんど期待できないということになります。焼酎によく合うといわれている肴は、素材にうまみ成分がしっかりと持ち合わせているものや味付けでうま味をふんだんに使い濃厚に仕上げた肴が、よく合うといわれるゆえんです。

3.食中酒としておすすめ【和乃醇】のこだわり

 米の旨みを最大限生かせるように精米歩合を70%としています。磨きが少なく栄養素が多すぎると雑味が残りますが、熟成をさせることにより雑味が、旨みに変わり主張しない控えめなお酒が出来上がります。また脂質には、フルーティで華やかな香り成分を抑制させます。磨けば磨くほど脂質が減っていき、表層からおおよそ50%を磨くと脂質はなくなるとされています。フルーティな香りは食前に飲むには向いていますが、料理の邪魔をする特に和食の場合はマッチングするのは難しい。
 酸度=有機酸の濃度が高いほど濃醇な味わいに、日本酒度が同じだとすると、酸度が高いとキレ良く、きりっと締りのある辛く感じるお酒になります。料理の合間合間に飲むと、一旦味がリセットされ次の料理に進みやすくなります。
 ボディのしっかりとした味わいの日本酒なので、水で1:1まで割っても味が壊れることがありません。
 ワイン程度のアルコール度数に水で割っていただいてもお好みで料理を楽しんでいただければと思います。

日本酒造組合中央会HPより

 日本酒の水割りは、日本酒を飲み慣れてない人や、日本酒の味や香りは好きだけどアルコールの強いのはちょっとという方にとっては、試してみる価値のある飲み方です。日本酒好きの人でも、原酒を飲む際や、時間をかけてゆったりと日本酒を飲みたいとき、飲みすぎたくない日にもおすすめです。水割りは、お酒が強くない方には特におすすめの飲み方です。
 日本酒の水割りは、やや水の量を抑えるのがコツで、日本酒の量に対して水の量を2割程度にするのがおすすめです。
軟水を使用すれば、日本酒の味わいが大きく変わるということもないでしょう。

純米酒「和乃醇」を飲んで一言

                        料理人 稲葉 恭二
  

私は、決して酒飲みではない。世間で言う嗜む程度である。

先日、日本の食文化に造詣が深い方が考案された純米酒を頂いた。
特殊な工程を経て熟成されたお酒とのこと。
瓶にもこだわりが感じられる。
私の料理教室にて生徒さんたちと試飲、そしてお料理に使わせて頂いた。
何はともあれ,先ずは一献いただく。
アルコールのツンとした感じがないのがありがたい。
ほのかな米の香り、口に含むとはじけるように甘みが広がり、
そのくせあと味は「キレすぎない辛口」に変化する。
和食は魚料理が多く、その中でも生で食べる刺し身は格別だ。
そんな刺し身を口に入れお酒を飲む、口の中では美味しさ同士が絡み合い
何とも申しがたい幸福感だ。
料理人は、食材を生かし、料理の味を引き立ててくれるお酒を望んでいる。
飲むための肴、酔うための酒では本末転倒ではなかろうか。
椀盛の仕上げ、椀汁に加えてみる。
酒肴にふさわしく、えもいわれぬ旨みと奥行きが感じられる。
イマジネーションが湧き出る。
料理人の創作意欲を掻き立ててくれる楽しみなお酒だ。

香川調理製菓専門学校客員教授。
香川栄養専門学校卒業後、日本料理店《つきぢ田村》を 経て料亭旅館《強羅花壇》取締役総料理長を10年務め、 現職。(有)エピキュアズで飲食店や食品製造業などの コンサルタンティングも行う。「いな葉クッキングサロン」主宰。